佐野貴さん(株式会社TALENT)

―リトリート「畑の寳幢寺」体験レポート―
土と発酵と才能が交わる、ボード合宿のかたち

1. なぜ、「畑の寳幢寺」で合宿をしようと思ったのか

「そろそろボード合宿、やりたいよね。どこでやる?」

そんな毎年恒例の会話の中で、真っ先に頭に浮かんだのが、はちいち農園のゆうちゃんとあっきーさんが営む、リトリート「畑の寳幢寺」でした。今回ここを選んだ理由は、大きく2つあります。


まず1つ目は、“想いに触れる合宿”をしたかったからです。

僕らTALENTは、人の才能を引き出す仕事をしています。
けれど、才能って、会議室の中だけで語り尽くせるものではないと思うんです。

自然の循環を身体で感じたり、五感をひらいたりすることで、普段は言葉にならない価値観がふっと立ち上がってきたりします。その感覚を、チームで一緒に体験したかったんです。


2つ目は、日常のスピードを一度脱ぎ捨てて、視点をゼロベースに戻したかったからです。

都市での仕事や生活は、どうしても“最適化”の視点に寄っていきます。でも、経営って、本来もっと余白のあるものじゃないかとも思っていて。

土に触れ、団欒を囲み、野菜中心の食事を味わう。そんな丁寧な時間の中に身を置くことで、思考のスピードを落とし、本当に大切にしたいことを再確認できる気がしていました。

そしてなにより、僕はあっきーさんとゆうちゃんという二人の在り方がすごく好きで。おふたりの哲学を、場そのものとして体験できる場所だからこそ、今回ここを選びました。

2. 実際に体験してみてどうだったか

まず、畑に足を踏み入れた瞬間、土の匂いにノックアウトされました。

到着してすぐに畑に出て、野菜の収穫からスタート。夢中で手を動かしているうちに、いつの間にか仕事のことはすっかり頭から消えていて、ただ「今ここにいる」という感覚だけが、じんわりと体に残っていました。

ふと隣を見ると、メンバーたちが無邪気な顔で楽しんでいました。僕も自然と笑顔があふれ、自然体になれた感覚を覚えています。

そしてもうひとつ、心に残っているのが、あっきーさんの“暮らしと農のまなざし”です

「農業って、ただ作物を育てることじゃなくて、自分を取り戻す場所なんだよね」そんなふうに語ってくださったあっきーさんの言葉が、胸に残っています。

土や風に思考や感情がゆっくりと混ざり、発酵していくような感覚。僕たちの輪郭が、少しずつ本来のかたちに戻っていくような、不思議で豊かな時間でした。

「余白もまた、生産性なんだな」そんなことを、身体を通して学んだ気がします。

午後は、才能のカードワークで自分たちのあり方を再確認。

自然の中で自分と向き合いながら、カードを通じて言語化するプロセスは、オフィスでは得られないような、深い納得感と静かな確信をもたらしてくれました。

夜は、完全プラントベースの料理。

お肉を使っていないのに、テーブルに並んだ料理はどれも色鮮やかで、香りも豊かで、味わい深い。ひと口ごとに「野菜ってこんなに美味しいの…」と驚かされっぱなしでした。

食べながら、自分の中の“当たり前”がどんどんアップデートされていく感覚があって、僕がよく口にする“新しい世界を認識する”とは、まさにこれだと思いました。

宿泊した和室やベッドルームも、とても心地よくて。静けさと安心感に包まれた空間は、深く休むにはぴったりの場所でした。

翌日は、味噌づくりのワークを体験しました。
ゆうちゃんが語ってくれた、大豆や発酵にまつわる話が本当に素晴らしくて。その言葉を聞きながら、手を動かし、みんなで味噌を仕込む時間は、自然と対話の温度も深さも増していくような、不思議な体験でした。

味噌がじわじわ発酵していくように、僕らの会話も時間をかけてじんわりと熟していく。あの感覚は、ずっと心に残りそうです。

そして何より、改めて感じたのは、「場」と「人」の力の大きさでした。

こちらが意図的にファシリテーションしなくても、自然と対話が立ち上がり、深まっていく。土・植物・発酵という“原体験セット”があるだけで、経営課題すら、いつもとは違う抽象度で見直すことができる。畑の寳幢寺は、そんな力を持った場所でした。

おわりに

リトリート「畑の寳幢寺」は、ただの癒やしの場ではありませんでした。経営や才能のOSをそっとリブートしてくれる、静かな装置のような場所でした。

もし自分が“頭でっかち”になりかけたら、またこの土を踏みに行きたいと思います。非日常で耕したアイデアを、また都会で芽吹かせる。そんな循環を、これからも大切にしていきたいです。

3. TALENTについて

株式会社TALENTは、「あふれる才能の輝きで、世界を幸せで満たす。」というパーパスのもとに立ち上がった会社です。これまで、10名規模の小さなチームから1万人を超える大企業まで、幅広い法人向けに“才能が生かされる組織づくり”の支援を行ってきました。個人向けにも、1,000名を超える方々にキャリアプログラムを届けてきています。最近では、AIと人材開発を掛け合わせた取り組みにも力を入れており、企業との連携を進めながら、業界を越えて“才能のエコシステム”を広げていくことにも挑戦しています。
Podcast「TALENT TALK」や、書籍『才能のトリセツ』を通じた発信にも力を入れながら、「才能あふれる社会」をつくっていきます。